
創作童話 · 7–10歳 · 保護者と一緒に読む

場面 01
さっと、きゅっ、行ってくる!
心の庭で、小さな花飾りの日がやってきました。シカのササは、仕事を見つけるたびに耳をぴんと立てます。リボンを選んだり、かごに詰めたりする前足のひづめは、とてもすばやく動きました。
今日は花包みを二つ届けます。黄色い花と黄色いリボンは、庭の門にいるココへ。薄桃色の花と桃色のリボンは、静かな花の木陰にいるミミへ。
ササは低いかごに二つの包みを並べました。青緑のマフラーの端が揺れます。「さっと、きゅっ、行ってくる!」配達が終わったら、残った花の片づけも手伝うつもりでした。
場面 02
空のかご、ちがう場所
ササは手前の包みを取り出してココへ。次の包みはミミへ渡しました。二か所をまわると、もうかごは空です。「さっと、きゅっ、配達おしまい!」
ココは結ぶ場所を見ながら、包み紙にくるまれた小さな束から門に取りつけました。ミミも台の高さを合わせるのに夢中で、花をまだ広げていません。二人とも、頼んでいた花をササが持ってきてくれたと思っていました。
でも、黄色い花はミミへ、薄桃色の花はココへ届いていたのです。ササは空のかごを見て、満足していました。花がどこに着いたかは、まだ確かめていませんでした。

場面 03
門の前の桃色
ササが門の前を通ると、ココが残りの包みを広げました。薄桃色の花が、丸く顔を出しました。「あれ?黄色い花を頼んだんだけど」
ササは足を止めました。頭の中で、二つの包みの場所がくるりと入れかわります。ココに桃色を渡してしまったんだ!かごは空でも、配達が正しく終わったわけではありません。
ササの耳が少し下がりました。本当のことを言ったら、もう仕事を任せてもらえないかも。「ちょっと待って。もう一度見るね」ササはココの顔より、リボンの結び目を長く見ていました。
場面 04
花より大きなリボン
ササは、二つの包みに残った花を木陰の作業台へ運びました。間違えたことを話さず、元の場所へ戻せばよい気がしました。まず、リボンをほどきました。
でも、友だちが飾った花まで、どうやって元に戻そう。考えるうちに前足のひづめが忙しくなりました。黄色いリボンをつぎ足して、輪をもう一つ。結ぶたびに大きくなります。
とうとう、花包みより幅の広いちょう結びが作業台にできました。「花がリボンをつけたのかな、リボンが花をつけたのかな……」ササは笑いかけて、口を閉じました。配達する花は、まだ入れちがったままでした。
場面 05
小さな声から
ササはココとミミを呼びました。「二つの包みを入れちがえて渡したの。もう仕事を頼まれなくなるのが怖くて、言えなかった。一人で直そうとして、リボンもからめちゃった。ごめんね」声は小さくても、今度は友だちの顔を見ました。
ココは門を振り返りました。「もう花を結んだよ。それをまたほどかなくちゃ」ササはうなずきました。早く大丈夫と言ってほしいとは、せがみませんでした。
ミミも言いました。「台には桃色の花を置きたいな。束ねた花を全部ほどくのかな?」ササは作業台を見ました。「どこまでそのまま使えるか、いっしょに見てくれる?間違った場所へ運んだ花は、取りに行くね」

場面 06
全部ほどかなくても
ミミは桃色の花の包み紙を、そっと持ち上げました。「ここは、まだきれいに束ねてあるよ」ササは中の束をそのままにしました。花を一本ずつ、全部取り出す必要はありませんでした。
二人は外側のからまったリボンだけをほどきました。ミミが包み紙を支え、ササが桃色のリボンを結びます。大きな黄色いちょう結びと余ったリボンは、台の横に分けて置きました。
ササはココが門から外した桃色の花も運び、ミミの包みに足しました。ココはミミのところにあった黄色い花を受け取り、門に結び直し始めました。少しずつ、それぞれの場所ができていきました。
場面 07
すばやいひづめ、もう一度確認
ササのすばやい前足のひづめは、今度も役に立ちました。滑りかけた包み紙を押さえ、ゆるんだ端をさっと留めます。ミミはできあがった桃色の花を台に置きました。
門へ運ぶ最後の包みが残りました。ササはかごを持つ前に、ココを呼びました。「黄色い花、黄色いリボン。門の前のココへ。合ってる?」
ココは花とリボンを順番に見ました。「合ってるよ。門の右側に置いてね」ササはその場所を見てから出発しました。「さっと、きゅっ、行ってくる!」今度は行き先を友だちと確かめてからの言葉でした。

場面 08
リボンの新しい仕事
門の前には黄色い花が、木陰には薄桃色の花が並びました。ココが最後の花を支え、ササがリボンを留めます。支度は予定より遅くなりましたが、どちらの場所も、頼んだとおりに飾れました。
作業台に残った大きな黄色い結び目を見て、ササが聞きました。「これは、どこに使おう?」ココは空の花かごを指しました。「ここなら、大きなリボンもつけられそうだよ」
二人でかごのふちに結ぶと、黄色いちょうが止まったようでした。「リボンにも、ぴったりの場所があったね」ササは笑いました。ココがかごを持ち、ササが残った花びらを入れます。今度は二人で、中まで確かめました。
物語の終わりに